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No.002『ぷれたぽるて』


『ぷれたぽるて』が今再びブームとなっている。

今から十数年前、奇怪な生物を目撃したというウワサが各地で広まり都市伝説として社会現象にまでなったことがあった。
やがてその生物の正体を巡って、否定説を除いては異星人説、古代生物説、生物兵器説など、あらゆる憶測を生み、論争を巻き起こしたが、結局どれにも結び付かず、世間的には、古くから民間伝承として語り継がれている妖怪『ぷれたぽるて』が実在していたとして定着していた。

ほどなくしてブームは去り、噂も耳にしなくなったわけだが、最近になってまた目撃情報が飛び交うようになった。

近年の怪奇超常現象ブームにあやかってのことだろうか?

かつてのブームの折、妖怪『ぷれたぽるて』のミイラを祀っているという神社がメディアで報じられ、『ぷれたぽるて』実在の決定的な証拠だと世間が沸き上がったことがあった。
その写真が公開されたとき、誰もが目を疑いながらもその神秘性に心躍ったに違いない。
しかし、科学的な検証の結果、それが異種生物の死体を繋ぎ合わせた贋物だったと発覚し、世間はおろか、ミイラの所有者まで落胆したという。

当時を知る者は、…いや、そうでなくても今の時代、都市伝説を真に受ける者などあまり居ないのかもしれない。

だが当時のそれとは違い、今回の情報は極めて具体的で真実味を帯びたものが多い。
『ぷれたぽるて』に遭遇した、家畜が襲われた、という証言に続き、写真、映像に収めたというハナシも出てきた。
その流れを受けてか、学者や専門家の中には、『ぷれたぽるて』が生物として存在していたとしても不思議ではないと語りだす者もいた。

いよいよ熱は高まり、『ぷれたぽるて』を捕獲しようという者、子供が襲われないかと地域ぐるみで警戒を強める動きも出てくる。
「家畜が襲われた」という証言が、『ぷれたぽるて』が凶暴で危険な存在であるという敵対意識を植え付ける一因となったらしい。
あわや『ぷれたぽるて』撲滅運動にまで発展しかけたとき、新たな証言が浮上してきた。

「川で溺れた子供を『ぷれたぽるて』が助けてくれた」というのである。

悪者だと決め付けていた相手が意外に友好的だったということで、一転して『ぷれたぽるて』は国民的アイドルのような存在となった。
特に『ぷれたぽるて』が棲んでいると噂されている地域では
「『ぷれたぽるて』の棲める自然豊かな町に」と、スローガンを掲げ、積極的に『ぷれたぽるて』の保護を訴え始めた。
市長自ら「『ぷれたぽるて』に住民票を」などと言い出す始末である。
要は『ぷれたぽるて』で町興しを狙っているのである。
現に『ぷれたぽるて』が目撃された地域には、一目『ぷれたぽるて』を見ようと観光客がどっと詰め掛けた。
旅行会社はこぞってツアーを企画し、現地でも『名物』『元祖』と銘打って、『ぷれたぽるて饅頭』などの、適当な土産物をあちこちで売り出すようになった。

ここまで来れば、後は大概、沈静化に移行していくのだが、今度は少し事情が違った。
なんと、生きたままの『ぷれたぽるて』が発見され、捕獲の様子がメディアで大々的に報じられたのだ。

これには流石に否定派も食い付いた。学会が大騒ぎになった。
TVの瞬間最高視聴率は過去最高の数値を記録し、それこそ全国が未知の生物を目の当たりにし、固唾を呑んだ。

その姿は想像よりも遥かに異様で、全身はやや赤みを含む淡黄色、細く長い四本脚、それぞれに五本ずつ独立した指があり、後脚で立ち上がって歩行し、前脚で物を掴んで持ち上げることも出来る様だ。
口は意外に小さく、目は一対で正面を向いている。
体毛はほとんど無く、頭部に集中していた。

我々とは全く異なる姿形をしている。
こんな生物が存在していたとは、全く驚きであると共に偉大な発見である。
生物学会に新風を巻き起こすに違いない。
この発見された『ぷれたぽるて』がこれからどういった扱いを受けるのか世間が注目することだろう。

現場が中継されているTVから奇声が聞こえてくる。

「タスケテ…、コロサナイデ…」

これが『ぷれたぽるて』の鳴声か…変わってるな…。




『ぷれたぽるて』:yosssy(2005/01/11)
by YosssingLink | 2005-01-11 22:42 | ショートショート
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